就職がこわい作者: 香山リカ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/02/20メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 7回この商品を含むブログ (70件) を見る

 題名どおり、えぇそうなんです。就職がこわいのです。

 というわけで、手にとってみた。



 いつもどおりに有名人偏見から、読んだことのなかった香山りか。

 いや、意外といけてる。



 全体的な趣旨としては、若者が就職しない理由、就職できない理由、周活の始められない理由。

 仕事=人生の目標 ということを求められる昨今。

 ということは、就職について考えること=自分について考えることだ。

 でも、そんなこと始めたら、何もかもが始まらないわけです。

なぜなら、現代の若者には連続性がない。連続性を認められない。自分で。という性質があるから。

 「そのときそのときで自分は違うんだから」という考え方。

 未来の自分に自信がない。 そういう状態なのだから、将来について考えようとしても、それはまず思考停止をもたらすのです。

 悩んだ結果、「わからないなら、やめておこう」と現実に足を踏み出すのを断念してしまうのも、現在の就職と結婚の問題に共通した傾向であるといえる。」
(p135)

 「そのときそのとき自分は違うんだから、と思っていたほうが、価値観も情勢もめまぐるしく変わるこの社会では生きていきやすい。」(P105)



 そして、思考停止(森達也の『世界が完全に思考停止する前に』を思い出します)について

 「何も考えられず、自分が何をしたいのかもよくわからないので、アイデンティティの一部であることがあらかじめわかっている「日本人」「日本文化」にすがろうとしている。・・・

 何も考えられないが、何かしなければならないとしたら、あらかじめ与えられているものの中から最善のものを選びたい。」

 「何より気になるのは、彼らが、自分の意思とは無関係なところであらかじめ決まっているらしい“階層”や“ナショナリティ”をあまりにもすんなりと受け入れてしまっていることだ。」(
p164)

  思考停止は、階層とナショナリズム、それから差別をより大きなものにしていくに違いない!



 

 それから、仕事=自分のやりたいこと をあまりにも推奨しているから、皆、そうならねばと思う。しかし、そんな仕事ほぼないだろう?

 若者は自分でなければならない仕事、そして特権的な特異なものを目指す。しかし、そんな仕事ほぼないだろう?

 若者は、自分に対して小さな自信しか持たない。だけどそれと共に特権性を認めている。 

 どこかに、私でなければできない仕事が待ち受けていると。

 そしてそれはいつか目の前に現われると。 しかし、そんなこと本当にメッタにありませんから!

 

  高校の先生のコメントについて

 「生徒たちは、私らしさだとか、やりがいを求めてしまいます。しかし、私ははっきり言っています。「やりたいことは仕事が終わってからやれ。自己実現だとか渡しらしさを求めるな。食うために働け」と。」

 著者は、高卒者が夢を仕事に結び付けられないという現実があるがゆえに、こういわざるを得ない理不尽さを訴える。(
P140)





 それから、『絶対内定』について。

 これは私にものすごく当てはまった!おそろしいことです。

 『絶対内定』は自己催眠的な状態に精神を持っていき「就職するぞ!」という気持ちを高め、厳しい就職を乗り切らせようとする効用がある。だが、

 

 「内定がとれ、熱狂の嵐が過ぎ去ってしまうと、「あれ、あの気分の高まりはなんだったのだろう?」とまた無力感や不全感が心の大半を占める状態に戻ってしまう人もいるのではないか。」(P93)

 まさに私の今の状態はこれだ!

 『絶対内定』に操られていたことは確かだ。

 そして、その嵐に、自らは入りたいと思って入ったのだ。そうでなければ就活に立ち向かえないと、知っていたから。

 しかし私は思う。『絶対内定』を読みつつやりつつ考えたことは、あまりの熱狂の中での話しだ。

 それは、所詮嵐に巻き込まれた人減の精神から発せられたものだった。 

 それが本物だと思いずっと生きていければ、それは本物になるだろう。

だが、私は気付いてしまった。

 あのときの高揚は仕組まれたもので、自分が仕組んだもので、自分の期待の中で、自分の限界の中で仕組まれたものなのだ。

 つまり、そのときに出来上がった夢も、自分の仕組んだ夢だ。

 ゆめを持つためのゆめ。





 さて、この本の中には「「女であること」と就職未満」という章がある。

そこでの言葉。

 「女性雑誌は八〇年代以降、一時、情報系、教養系に偏りましたが、その後、おしゃれも教養も、という路線に落ち着くかに見えました。そこではたとえば藤原紀香さんのように、女性としての魅力も持ちながら性格はさっぱりしていて、写真や語学、ダンスなどで自分磨きをする中性的な女性が憧れだったんですよ。

 ところがここ2,3年は自立とか内面の充実なんかすっかりどうでもよくなちゃって、とにかくテーマは見た目の女らしさ、かわいらしさ。タレントで言えば、長谷川京子さんとか矢田亜希子さんといった、自立や強さからは無縁の女の子っぽい人が人気です。」
(P148)

 あぁ、確かに… 

 恐ろしいことだ。

 悲しいことだ。