ノレ・ノスタルギーヤ

ノレ・ノスタルギーヤ

 

『ノレ・ノスタルギーヤ』はエッセイ。
  著者は在日韓国人
  ノレ。は韓国語で歌。
  ノスタルギーヤはロシア語で郷愁のこと。

 私も、さまざまな問題について、凝り固まった考え方をしていたんだな。と、最終的には感じる。
 移民や、強制移住、流浪の生活。 
 それらについて、それは、彼女自身の問題でもあるから、温かい、希望の目で、だけど、決してぼやけて希望に見えるのではなく、冷静に、自分を見つめた上で現れる希望の目。

 もちろん、厳しい現実もあるだろうし、それを発する事も大切。
 人々に、反省や、再びそのようなことが起きないように訴えかけることも大切。

 だけど、そんなふうにばかり見ないでよ。

 彼女はそういっているんだ。
 
    私たち、とっても幸せなの。

     って。



 忘れずに書き留めておきたい言葉。

この世界は、どんなにその姿を追い求めても見つからない「本物の人間」のものではなく、他でもない、「獣心」と「本物の人間」への憧れとを内に抱えて、共に孤独を生きている私たちのものであるということ。

そして、「獣心」を抱え込みながらも真に人間らしくありたいと願い続ける愚直でちっぽけで孤独な魂の奥底にこそ、この世界を生き抜く希望が潜んでいることを。「本物の人間」ではなく、「本物の人間たろうと願い続ける獣心」のわれらの心の内にこそ希望があること。

ああ、きっと、そうなのでしょう、私が何かに呼ばれているのではなく、私が何かを呼んでいる。私が、呼んでいるのです。

思うに、そこは、ひとりでは行けないけれども、皆で手に手を取り合って足並み揃えていくようなところでもない。
  同じ空の下を同じ思いを胸に歩き続けている仲間がいることを感じながら、ひとり旅ゆく。そんな人々が切り開いてゆく無数の道が、いつかどこかで交差する。その「いつか」を信じて、「ことば」を探して、「歌」を求めて、「と」から始まる旅をユラユラと生きる私がいます。


 やさしい目のあふれたエッセイ。