ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)作者: 川上弘美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2004/11/28メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 12回この商品を含むブログ (143件) を見る
予定のない休日は、遅くまで寝て、起きても部屋を出ないことが多い。
必然、朝も昼も食べない。
起きて何をするかといえば、ねっころがったままベッドサイドのサピエンスくん(積読本棚)から、本を漁って読み始める。
(カーテンも開けずに)
本日は『ゆっくりさよならをとなえる』 川上弘美
何度も何度も言うようだが、このタイトルが好きだ。
始めのほうは、ちょっとのり切れず、でも、後半はずいぶん共感した。
特に鄴の「不幸に似通ったもの」
田辺聖子の『私的生活』を読んでのエッセー。
恋愛において、「みくびる」「軽くみる」ということが大事なのではないか、ということ。
そしてその「みくび」っていたことが、深く苦い思いを味わうということ。
まさに。そのとおり。だと思う。
トルストイは「幸福の形は一つしかないが不幸の形は幾通りもある」というような意味のことを書いたらしい。
それを、恋愛も、人生もか。
と、川上弘美は言う。
なるほど。
このコメントが、哀しく美しい。
たとえばうまれてはじめて男の子と手をつないだときの、あの緊張感にみちながらも、ほっと解放されたような、複雑な心もちを含む、やすらかさであった。この表現の仕方が素敵。
久しぶりに読み返して、読後の印象が思ったほど変わっていないのに、驚いた。別れた男とあったら、やっぱり素敵だった。そんな感じだった。素敵だけれど、別れたのは当然だったな。そんなふうにも思った。本をこんな風に例えるところが好き。
もしかしたら、私は(その本を)勧めてめてくれた人のことを少しばかり好きだったのかもしれない。いや、かもしれない、なんてもったいぶった言い方はよそう。自分が誰かを好きかどうかくらい、この年になってわからなくてどうする。私はその人が好きだったのだ。
…電車の中で読み、電車を降りて歩き始めてからも読んでいた。…ただ歩いていることが寂しくてならなかった子供の頃。そして大人になっても、やっぱりさみしい私である。
たとえば図書館に行きたくなるのは、のんびりしているとき。…一方、本屋さんに行きたくなるのは、てきぱきとして気分のとき。確かに!
いまだに私はよるべなくて、「よるべない」という言葉が好き。