海の鳥・空の魚 (角川文庫)作者: 鷺沢萠出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1992/11メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 59回この商品を含むブログ (26件) を見る

やっぱり素晴らしい作家をね、なくしたよね。
もっと、作品を一杯出してから、死んでほしかったね。
いや、いいんだけど。 そりゃぁ鷺沢さんの。ね。人生ですから。
 だけど、やっぱり、素晴らしい作家ですよね。
 上手いというか。上手い。
 ものすごい短編集で。1つの作品が8ページくらい。
なのに全て素晴らしい出来。
短編て、絶対難しいと思う。だけど、すごいね。
 静かな、おとなしい悲しみから、静かな、暗い光りを導く。
 晴れやかな美しいラストでなく、暗いラストでも、だけど何か悲しい中にも光が暗く見える。そんなラストが好きなんです。
 たったの10ページで泣かせる。
 たったの10ページで自分の未来を考えさせる。
 たったの10ページで過去に思いをはせさせる。
 悲しみと、とても小さな希望を。それは、あまりにも現実的で、感動的。
 悲しみと、とても小さな希望。それが、人生を暖かくしているか、と。

 鷺沢萠のよさは、悲しく寂しい優しさ。だと思う。

 「どんな人にも光を放つ一瞬がある。その一瞬のためだけに、その後の長い長い時間をただただ過ごしていくこともできるような。一瞬一瞬の堆積こそが人の一生なのだといわれれば、それを否定する事はやはりできないけれど、うず高くつまれてゆく時間のひとコマひとこま、その全てを最高のものに仕立て上げるのはとても難しい事だ。難しい事だから、「うまくいった一瞬」が大切なものになるのではないだろうか。」 

あとがき