愉楽の園 (宮本輝全集)作者: 宮本輝出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1992/12/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る

 久々の宮本輝本。



 「<私は、自分たちの恋をさまたげていたものが、実に無意味で取るに足らないものだったことに、つまり、こけおどしに過ぎなかったことに気付いたのです。恋をする限りは、そしてその恋について考える場合は、ありきたりの意味での幸福とか、不幸とか、罪とか美徳とか、そんなものよりももっと高く、もっと重要なことから出発すべきだ。それがいやなら、はじめから何も考えないほうがいい・・・。>」(P278)


 チェーホフの『恋について』から?



 「私は、一方的に恵子に恋をした。だが、私は恵子には、自分と同じ感情を求めなかった。人は、恋だけで結ばれるものではないからね。私が恵子に求めた私への感情は、静かな好意が、いつか深い愛情に変わることだった。」(p281)