姫君 (文春文庫)作者: 山田詠美出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2004/05/11メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (71件) を見る

 

そうか。不幸とは、他の人が決めることなのか。それじゃあ、幸福とは、まるで別物だ。それは、いつだって、自分の言葉でしか姿を現さない。




 なるほど。こうして、聖一、麻子に快感を与えているのか、と僕は思った。これでは、セックスの出番などない筈だ。




 
特別な人と共有する過去を秘密って言うんだよ。




 この人は、自分がいなくては駄目なのだ。互いにそう思って見詰め合う時、今度こそ、2人の間を隔てるものは消えてなくなる。その時、抱くのでもなく、抱かれるのでもなく、抱き合うことができるように、彼は思う。




 わたくしは、もうとうに、自分が弱虫であるのに気付いている。支配することを目論む者は、いつだって、それを隠しているものだ。




 人生狂わせる人間は稀少価値。


 

 寝ない関係が産むものは限りなく、そしてそれは美しい。寝る関係が産むものも限りなく、しかしそれは時に醜い。しかし、そう、彼らは愛らしいのだ。寝る関係が生み出す醜さも涙も、全てが愛らしい。その醜さが、本物の凶器に変わってしまう瞬間まで、私はそれらを愛らしいと感じることができる。