『彗星物語』 宮本輝

彗星物語〈下〉 (角川文庫)

彗星物語〈下〉 (角川文庫)

“喪失”というものは、なぜこんなにも哀しくて、そして美しいのだろうか?

 
 何て思ったわけです。

 『彗星物語』は上下巻合わせて3時間で読めると言うお手ごろさのくせに、最後には思いっきり泣かされたし、幸せを感じる。

 6人家族+義父+義妹とその子供達+自分を犬だと思っていない犬フック という大家族に共産主義国家から3年の猶予で日本に留学してきたハンガリー青年の三年間の話。

 皆に欠点が有って、皆ちょっと変で、いさかいが絶えなくて、理不尽で、わがままで、本気で怒って。

  本当におきていそうな、本当に起こり得るような気がするような、普通の話。 というのも、登場人物の感情が本当に普通だから。
 えらく聖人みたいな奴もいないし、えらく悪い奴もいない。 わがままな、人間たち+犬。

 すぐに読めちゃうのに、あぁ、なんだか壮快な?爽快な?壮快な、涙と感慨に包まれる。

それから、井坂幸太郎の『チルドレン』や、平安寿子の『もっとわたしをみたいな、短編集なのに、一個目の話の脇役が二個目話では主役で出来る、みたいな“おかしさ”とか、“つうっぽさ”みたいなのが好きな人は、途中で出てくる、中学校のテストに、自分の(=宮本輝の)作品使っちゃうあたりに、楽しさを感じるでしょう!